クラウド・コレクター
「だから、彼らは帽子を
被るんじゃないですかね?」
「帽子を?」
「ええ。記憶が逃げてゆかないようにです。
これは私の推理に過ぎませんが、おそらく
記憶ってものは、頭のてっぺんのあたりから
渦を巻いて蒸発してゆくんです。
それが頭上で結晶して天使の輪っかとなる。
アゾットの人々は、
もの忘れが激しいと聞きましたけれど、
それに抗するべくして、大昔の知恵ある者が
帽子の効果を発見したのでしょう」
「なるほど、それで彼らはいつでも
帽子を被っているわけだ」
「いえ、それは違います。彼らは、もうそんなこと、
とうに忘れていますよ。
なぜ帽子を被るのか、なんてことはね」